目次
アクリルの特徴
これまでプラスチック素材に関するさまざまなコラムをご紹介してきました。
中でも「アクリル」についての内容は多くあったかと思いますが、
今回は改めて「アクリル」素材の特徴について、メリット・デメリット両方の観点から詳しく見ていきたいと思います。
アクリルについて全く知らない方はもちろん、アクリル素材について知識のある方も、
これを見れば「アクリル」について一度に知ることができる内容になっているかと思いますのでぜひ最後までご覧下さい。
透明度
まずは「透明度」です。
アクリルの最大の特徴とも言えるのが「透明度」です。
実際に光線透過率は93%であり、これはガラスの透過率92%よりも高く、ガラスよりも透明度が高いということが分かります。
そのため”有機ガラス”と呼ばれることもあり、アクリル板はプラスチック素材の中でも抜群の透明性を備えています。
その透明度の高さから、割れやすいガラスでは危険な場所や用途などに、ガラスの代用品としてアクリルが用いられることも多いです。
強度
次に「強度」です。
先程ガラスにも勝る透明度を兼ね備えているとお伝えしたように、一見ガラスに近い見た目や特徴を持つアクリルですが、強度に関してはガラスよりも10~16倍ほどの強さを持ちます。
またガラスであれば割れてしまうとバラバラに破片が飛び散って危険ですが、アクリルであれば割れてしまってもガラスのように粉々になりにくいです。
このように透明度の高さだけではなく耐衝撃性に優れている点からもガラスの代用品として使用されることも多いです。
※プラスチック素材になりますので、割れないというわけではありません。
耐候性
次に「耐候性」です。
耐候性とは、太陽光や温度・湿度、風雨などの屋外の気候条件に対する耐性を言います。
耐候性が低いプラスチック素材だと、こういった気候条件によって変色や変形、ひび割れ等の劣化が起こります。
イメージで言うと、例えば洗濯ばさみや屋外に置いてあるバケツなどが変色したりひび割れしている状態です。
アクリルはプラスチック素材の中でも耐候性に優れた樹脂になります。
また下記でも詳しくお伝えしますが、実はアクリルは大きく2種類に分類されており、アクリルの中でもより耐候性に優れた”キャスト板”と呼ばれるものがあります。
加工性
次に「加工性」です。
まず、プラスチック板の加工には、カットや接着など、様々な加工がありますが、アクリル板はその中でも加工性にも優れた素材と言われています。
数あるプラスチックの中から今回は皆さんも聞き馴染みがあると思われる「アクリル」、「塩ビ」、「ポリカーボネート」の3素材で、
一般的なプラスチックの加工の可否を表にしてみました。
アクリル | 塩ビ | ポリカーボネート | |
カット | 〇 | 〇 | 〇 |
切削加工 (削りだし) |
〇 | 〇 | 〇 |
溶接・接着 | 〇 | 〇 | × |
曲げ加工 | 〇 | 〇 | △ |
成形 | 〇 | 〇 | △ |
レーザー加工 | 〇 | × | × |
穴アケ | 〇 | 〇 | 〇 |
ミガキ | 〇 | × | × |
このようにこちらの表を見て頂いても分かるように、アクリルはプラスチック板の中でも、可能な加工の種類が多いです。
比較した塩ビやポリカーボネートでは、例えば、熱に弱かったり、反対に熱伝導率が悪いため、加工ができない、加工がしにくいというものもあります。
そういった中で、上記のように一般的なプラスチック加工全般において加工が可能・加工しやすいという点もアクリル板が幅広い場面において多用される大きな理由です。
アクリルの種類
先程耐候性の部分でもお伝えしたように、見た目に変わりはないですがアクリルは大きく”押出板”と”キャスト板”と呼ばれる2種類に分類されています。
製造過程や長所や短所がそれぞれ異なるなど細かな違いはありますが、
分かりやすく言うと、”押出=屋内使用向け、キャスト=屋外使用向け”という違いになります。
下記で詳しく見ていきたいと思います。
押出板
まずは屋内使用向けの”押出(おしだし)板”です。
粘土状のアクリル樹脂をローラーで押出して製造されることから”押出板”と言われています。
長所としては、板の厚み交差±0.2ミリ以内と板の厚みが一定している点で、アクリルケースなどの接着加工に適しています。
また分子量が粗いため、切断した場合粘りやすいので板のまま使用したり、簡単な穴開け、切削、折り曲げ等に最適です。
キャスト板に比べて価格も安く、熱成型もしやすいのが特徴です。
一方短所としては、耐薬品性に弱いという点があります。
キャスト板
次は屋外使用向けの”キャスト板”です。
こちらは2枚のガラスの間にアクリル樹脂を流し込み、硬化させて製造されています。
長所としては押出板に比べ硬く、機械加工に適しているためアクリルの表面にレーザー彫刻・切削加工を施す場合に最適です。
押出板と比べて価格は少し高価になります。
また大判サイズや板厚の厚い板はキャスト板しかなく、アクリルカラー板もほとんどがキャスト板です。
短所としては、押出板に比べて板の厚み交差が大きいという点や、分子量が細かいため接着などの場合溶剤に溶けにくいという点があります。
メリット
ここまでアクリル板の特徴や種類についてお伝えしてきましたが、ここからはアクリル板のメリットについて見ていきたいと思います。
軽い
まずは重量についてです。
まずプラスチックの重量計算は、 縦(m) x 横(m) x 板厚さ(mm) x 比重= 重さ(kg) で算出します。
そのため、プラスチックの重さは比重で比較をすることができます。
例えばアクリルと同じプラスチックの一種である「塩ビ」とを比較してみると、
塩ビ板の比重は 「1.4」 に対して、アクリルの比重は 「1.2」 なので、
重量は、 塩ビ>アクリル となります。
具体的な数字で見てみると、板厚が3mm サイズが1000mm×1000mmのアクリルと塩ビを比較した場合、
塩ビ:1m×1m×3m×1.4=4.2kg < アクリル:1m×1m×3mm×1.2=3.6kg となり、アクリルの方が軽いことが分かります。
安価
購入時にまず気になる点といえばやはり”価格”が挙げられるかと思います。
冒頭でもアクリルはガラスの代用品としても使用されることが多いとお伝えしましたが、
価格に関してはどのくらいの差があるのかを見ていきたいと思います。
素材 | 板厚 | サイズ(mm) | 販売価格 | 販売店 |
フロートガラス板 | 3mm | 200×300 | ¥2,120(税込) | [Amazon] |
フロートガラス板 | 3mm | 220×300 | ¥4,169(税込) | [通販モノタロウ] |
透明アクリル板(押出) | 3mm | 220×300 | ¥506(税込) | [アクリルデポ] |
透明アクリル板(キャスト) | 3mm | 220×300 | ¥550(税込) | [アクリルデポ] |
板厚3mm サイズ200mm×300mmで比較すると、アクリル板はガラス板の1/4以下の値段になりました。
したがってアクリル板の方がガラス板よりも安価であるという結果がわかります。
※板状のアクリルとガラスを比較した場合の結果になります。
※100均や雑貨店で販売されているような成形品は型を作って大量生産されているので特別安価なことが多いです。
※尚、この記事における価格・商品等は調査当時のデータとなります。
耐久性が高い
上記でもお伝えしてきたように、アクリルはガラスなどに比べて強度が高く、また耐候性にも優れており、
耐久性は個体差や条件によっても異なりますが10~20年と言われています。
この特徴を活かして、自動車の部品や看板素材などにも多用されてます。
デメリット
次はアクリルのデメリットについて見ていきたいと思います。
比較的長所となる特徴が多いアクリルですが、もちろん短所となる部分もあるためアクリルを使用する際や購入する際には両方の点を知っておくことが大切です。
傷がつきやすい
ガラスにも勝る透明度を持ち、強度も高く、価格もガラスよりも安価であるアクリルですが、”傷”に関しては弱い素材です。
衝撃に関してはある程度の耐性がありますが、表面を強くこすったりすると傷がついてしまいます。
そのため使用方法や掃除方法なども注意する必要があります。
薬品に弱い
また薬品に弱いという点もあります。
耐薬品性に優れていると言われる塩ビと比べてみたいと思います。
(※数値は10段階評価で数字が大きいほど耐薬品性がよい。尚、下記評価数値は相対数値です。また、応力や温度条件、薬品の組合せなどの使用条件によって変わりますので、大まかな目安としてください。)
素材 | 有機溶剤 | アルカリ | 酸類 |
アクリル | 3 | 5 | 9 |
塩ビ(硬質) | 5 | 10 | 10 |
塩ビ(軟質) | 4 | 10 | 10 |
表のように、アクリルは酸には強いですが、強アルカリや有機溶剤には弱いと言えます。
薬品に触れる仕様用途には不向きな場合があるため事前に確認しておく必要があります。
また傷に弱いという点に加えて薬品に弱いという点においても、アクリルを掃除する際にも注意する必要があります。
アクリルの掃除方法について詳しくご説明している記事があるのであわせてご確認下さい。
☞アクリル板(パーテーション)の正しい掃除方法とは?実はアルコール除菌はNG!
特性を生かした商品
ここまでアクリルの特徴について詳しくご説明してきました。
ではここからはこれらのアクリルの特性を活かして実際どのようなものにアクリル素材が使用されているかをご紹介していきたいと思います。
オーダーメイド加工
フォトフレーム・額縁用アクリル
こちらはフォトフレーム用としてアクリル(キャスト板)をオーダーサイズにカットした例となります。
アクリルの透明度の高さと耐候性の高さから、このようなフォトフレームや額縁用のガラスの代わりとして用いられることも多くあります。
アクリルケース
こちらはアクリルケースの製作例になります。
鉄道模型用のケースを、お手持ちの台座に合わせてオーダーサイズで底板無しの5面体ケースを製作しています。
アクリルの透明度の高さと加工性の高さから、このようなフィギュアケースなどのほとんどがアクリル素材で製作されています。
アクリルプレート
こちらは透明のアクリル板にレーザー彫刻をした後に、曲げ加工をして自立するプレートを製作しました。
アクリルはレーザー彫刻や曲げ加工にも適した素材です。
このようなプレートをはじめ、アクリルは看板や表札にも用いられています。
ここで紹介したのは加工例の一部になります。
その他にもアクリルでさまざまな加工が可能です。
”アクリルでこんなものを作りたい”、”こういう加工は可能なのか”、などのご質問もぜひお気軽にお問い合せ下さい。
まとめ
今回はアクリルの特徴について改めてご説明してきました。
今回ご紹介したアクリルに限らず、どのような素材にもそれぞれメリット、デメリットとなる特徴があります。
できない加工や不向きな加工などもあるため、素材選びや加工方法を間違えると加工が出来なかったり、すぐに破損や劣化を起こしてしまう場合があります。
素材を選ぶ際や加工をする際にはそれぞれの素材の特徴を知っておくことが大切です。
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